英米の大学への入学、留学で利用される英語系資格のIELTS(アイエルツ)は、昨今様々な形でニーズが高まっています。特徴のある試験なので専用の対策は必須なのですが、マイナーな資格であるため利用できる情報は限られています。

この記事では、主にこれからIELTSを受験する人向けに、IELTSの対策におけるポイントを4技能別に解説しています。

IELTSのテスト概要

IELTS(アイエルツ)概要

https://www.eiken.or.jp/ielts/

IELTSは、英語を母国語としないノンネイティブスピーカーのための語学試験です。リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの4技能すべてが試験される、英米の大学を受験する際に語学力の証明としてスコアを提出できるなどの特徴から、TOEFL(トーフル)とかなり性質が似た試験であるといえます。

IELTSは世界各地で実施されるグローバルスタンダードの試験で、イギリスのブリティッシュカウンシルという機関がテストを開発しました。日本では、英検を実施する日本英語検定協会がIELTSの試験を企画運営しています。

このIELTSには、「アカデミックモジュール」「ジェネラルモジュール」2つのテストモジュールがあります。以降で詳しく説明しますが、前者は英米の大学(学部・大学院)での講義などについていけるかをテストする試験であり、後者は英語圏で定住する人が問題なく生活できるかどうかをテストする試験です。

リスニングとスピーキングはどちらのモジュールでも共通の試験問題が課されますが、リーディングおよびライティングの試験問題は各モジュール独自の問題が課されます。もちろん内容はそのモジュールの趣旨に沿ったものになります。

日本国内での申し込みは日本英語検定協会のホームページから可能です。また、受験の際に試験当日まで有効なパスポートの提示が求められますので、パスポートを持っているか、あるいは持っているパスポートの有効期限が切れる心配がないかを事前に確認しておきましょう。受験費用は1回あたり25,380円と、かなり高額です。

IELTSが受験できる場所は全国の主要都市です。開催頻度が場所によって異なるので、何度も受ける必要がある場合などは、都心などで受ける必要があります。

他の英語関係の試験との違いと受けるメリット

IELTSを受ける一番のメリットは、英米の大学を受験する資格が得られることです。IELTSのスコアを所持していれば、それが自身の英語力を示す国際的な指標になり、英語力の証明になります。その他にも、かなり限定的になりますが日本国内でも入学試験、入社試験、昇進の際の英語力アピールでスコアを利用できることもあります。

IELTSの問題自体は、英検一級、準一級、TOEFLの問題にかなり近いです。TOEICなどとは大きく異なり、語彙問題などの一問一答形式の問題は全くありません。

問題の難易度自体はものすごく難しいというわけではありません。たとえばリスニングはTOEFLのそれと比較すればかなり優しめになっていて、対策が十分であれば全問正解することもできます。難問はそれほど出ないので、英語に自信があるのであればそもそもIELTSに特化した勉強をしなくてもいいかもしれません。

アカデミックモジュール

IELTSアカデミックモジュールは、英米への大学受験、留学などを予定している学生向けのテストモジュールです。現地での英語の講義やゼミについていけるかどうかを試験することに重きを置いており、そのためこのテストモジュールで出題される内容は論文や教科書の抜粋などが多いです。

なおアカデミックモジュールの受験者は、この後で説明するジェネラルモジュールの人と比較すれば圧倒的に多いです。

ジェネラルモジュール

IELTSジェネラルモジュールは、英語圏に移住して現地で職に就き、日常生活をいとなむ際に不自由しない程度の英語力が備わっているかを試験するテストモジュールです。アカデミックモジュールが大学での高度な英語を想定している分、こちらは相対的にレベルが低めのテストになっています。

ジェネラルモジュールのほうがアカデミックモジュールよりも問題がやさしく正答しやすいので、ジェネラルモジュールを選択してハイスコアを狙う場合は、アカデミックモジュールよりもさらに正答率を上げる必要があります。

バンドスコアを知り、勉強目標を定めよう

IELTSのテスト結果は「バンドスコア」と呼ばれる数字で出されます。このスコアは0~9.0のレンジであり、満点は9.0に相当します。以下では、受験者も多く難易度も高いアカデミックモジュールを中心に解説してきます。

バンドスコアとは

バンドスコアは、4技能の試験結果から算出される0~9.0のスコアであり、大学への入学、留学時に課されるボーダーラインもこの数字で示されます。

CEFR(セファール)と対応づけることも可能であり、おおよそ以下のようになっています。下の表を見ればわかると思いますが、IELTSで測定可能な英語力の範囲は、CEFRでいうC2~B1とかなり高レベルです。英語の素養が全く身についていない人が対策せずに受けても全く歯が立たないので、最低限英検二級に合格する程度の実力をつけてから受験したほうがいいでしょう。

CEFR IELTS 英検 TOEFL iBT
C2 8.5~9.0
C1 7.0~8.0 1級 95~120
B2 5.5~6.5 準1級 72~94
B1 4.0~5.0 2級 42~71
A2 準2級
A1 3級

日本人のバンドスコアの平均は5.5~6.0

なお、2017年の調査によれば、日本人のアカデミックモジュール受験者の平均バンドスコアは5.68です。

リスニング リーディング ライティング スピーキング 総合
5.86 5.53 5.39 5.71 5.68

もちろん、IELTS受験者の平均であり、平均的な日本人の英語力と比較すれば、ずっと上です。

以降で説明しますが、英米の大学への入学、留学を目標として受験するのであれば、7.0~7.5が一つの対策目安となります。8.0や9.0を目指す人は、IELTSのスコアに肩書的な地位を求めている人や、あるいは語学試験マニアの人です。実用的な用途でスコアを利用したいのであれば、7.0~7.5以上あれば十分でしょう。

受けたい大学の応募基準を調査し、目標にしよう

ランクの高い大学のほうが要求されるIELTSのスコアが高く、また、学部より大学院のほうが要求するスコアが総じて高くなっています。おおよそ6.0が最低ボーダーラインと考えると良いでしょう。

例えば、オックスフォード大学の大学院レベルだと7.5が最低ラインです。自分が入学したいと考えている大学が求めるIELTSのスコアは大学の公式HPなどで確認できますので、ぜひチェックし対策の目標としましょう。

IELTSのスコアを高めるための対策とポイント

このセクションでは、IELTS受験者向けにスコアアップのコツや対策法などを紹介します。IELTSで出てくる問題のクセを把握しながら、効率的に対策していきましょう。

まずは自分のスコア帯を確認する

Cambridge IELTS 13

現在では、IELTS公式が出版している公式問題集が利用可能ですので、これを用いて現状のスコアを確認するといいでしょう。ナンバー13まで出版されているので、まずは最新のナンバー13を買い、それをマスターして余力があればナンバー12やナンバー11を買う、さらにナンバー10を買う…といったやり方がおすすめです。

また、オンライン上には無料で利用可能なIELTS学習コンテンツが多く存在しますので、そちらを利用することもおすすめです。玉石混交ですので、評判をチェックしてから利用するやり方がおすすめです。

スコアを確認するために、腕試し的に本番の試験を受ける手もありますが、受験費用が高く、また地域によっては受験のチャンスが非常に少ないこともあるため、あまりおすすめはできません。

目標スコアを定め、勉強計画を立てる

上で説明した要求スコアを確認し、IELTS目標スコアを決めましょう。そこから逆算して、それぞれのセクションでどの程度の正答率を稼げば突破出来るかが見えてきます。正答率とスコアはおおよそ比例関係にあるので、8割とれば7~8のスコアをとることができます。

もちろん、入学、留学にはデッドラインが必ずあります。悠長に構えていると間に合わなくなるため、対策の際は長期的なプランはきちんと立てましょう。たいていの場合、出願時にスコアを証明する書類を願書に添付して送るようになっていますので、その日までにスコアを用意する必要があります。受験日や結果発表の日など、重要日程はもれなくチェックしましょう。

語彙力は最初から最後まで継続的に増やす努力をする

IELTSで求められる語彙はアカデミック系に偏重しているため、専用の対策は必須となります。IELTS特化の単語帳は日本語版のものも英語版のものも出版されているので、それらをうまく利用して学習をしましょう。

また、語彙は継続的に鍛えることをおすすめします。学習のフェーズによらず、一定のペースで単語帳に触れるようにしましょう。月並みですが、単語学習は通勤通学、お風呂、寝る前など、隙間時間の活用が有効です。単語カードや単語帳を駆使して、焦らずたゆまず取り組む意識を持ちましょう。

リスニング・パート

IELTSリスニング・パートの問題は、会話を聞き取りその内容に関する設問を答える形式の問題です。設問は全部で40問であり、正答率に応じてスコアが算出されます。テストの所要時間は40分です。選択肢を選ぶものと、空欄穴埋めをするものなど、多岐にわたります。

リスニング・パートの対策方法

IELTSのリスニングで話される英語は典型的なイギリス英語です。アクセントや発音に特徴があり、普段聞きなれていない場合には注意が必要です。あらかじめイギリス人話者の英語を聞いて対策しておきましょう。

また、同じ意味で使われるものの、英米で表現が異なる英単語もある程度把握しておきましょう。例えば、車のウインカーはアメリカでは「blinker」ですが、イギリスでは「indicator」です。ほかにも、携帯電話はアメリカでは「cellphone」イギリスでは「mobile」になります。

また、リスニング問題の設問タイプはある程度定番化されていて、特異な問題はあまり出ません。公式問題集などを用いて数をこなして問題の型を理解・対策すれば、それなりのスコアアップは期待できるでしょう。

リスニング・パートの例題

www.ielts.org

www.ielts.org

IELTSの例題にアクセスして、問題に取り組んでみましょう。

このダイアログは、海外に荷物を発送したいお客さんと、宅配サービス業者のやり取りの一部です。荷物を発送したいお客さんが、配送オプションなどの細かいことについて業者と話をしています。

特に難しい要素もなく、比較的簡単に理解できるかと思います。では、設問を見てみましょう。

Type of insurance chosen

A.
Economy
B. Standard
C. Premium

お客さんは、業者の人からの補償オプションの説明の後に、一番高いやつでお願いします、と言っているので、正解はCです。

このように、直接的な表現ではなく、遠まわしにキーとなる情報が出てくることはよくあります。近視眼的にならずに全体像をキャッチする、その状況をヴィヴィッドに頭の中でイメージするという力が求められます。

他の例題を見てみたい方は、こちらから確認してみてください。音源も利用可能ですので、まずは聞いてみることをおすすめします。

リーディング・パート

IELTSリーディング・パートは、3つのパッセージを読み、それに関する設問に解答する形式の問題です。アカデミックモジュールのパッセージは論文などの抜粋、ジェネラルモジュールでは新聞の一面など、日常のシーンでよく目にする文章からの出題です。

リーディング・パートの対策方法

リーディングでは、文章の全体像をまず把握し、その後設問で聞かれているポイントを確認しながら解く、というやり方が有効です。

それぞれのパッセージは非常に長く、読むだけでも重労働です。全体像を俯瞰的にとらえる、各パラグラフのトピックセンテンスを理解するという文章読解の王道をマスターすることが有効な対策です。

リーディング・パートの例題

Academic Reading IELTS

Academic Reading IELTS

こちらの例題にアクセスし、1番目の問題を試しに解いてみましょう。

この英文は、「chronobiology(時間生物学)」に関するコラムのような英文です。第一問目では、時間生物学とは?ということが問われていますが、冒頭のパラグラフにキーセンテンスがあることがわかります。

第一パラグラフの、but it's actually...のセンテンスにて、時間的なリズム、およびそれが動植物に与える影響について研究する分野が、時間生物学であると述べられています(このように、冒頭で言葉の定義をするパターンはよくあります)。

これは、設問で書いてある「時間変化にともないどのように生物が進化したかを研究する分野」という説明と一致しません。そのため、Falseが正解です。

ライティング・パート

IELTSライティング・パートの問題は、「タスク」と呼ばれる課題に対して文章で説明を与える問題です。1つ目のタスクは所要時間が20分、2つ目の所要時間は40分です。出題される内容自体はいたってシンプルなものであり、問題の意味を理解できない、といったことにはまずならないと思います。

また、ライティングはキーボードによるタイピング入力ではなく、解答用紙に手書きの形式です。最低限、採点者が読めるくらいの綺麗な字を書けるようにしておきましょう。筆記体で書いてもOKですが、読みやすさ重視であることには変わりありません。

ライティング・パートの対策方法

タスク1では、自分の意見、主張を述べる必要がありません。図表やデータを見てその特徴を述べたり、要約をしたりする形式になっていて、客観的にものごとを記述する力・対策が求められます。

This graph shows that...(この図は~を示しています)」などのフレーズを用いて、まずはその図が何を示しているのか、という全体像をはっきりさせましょう。

データや図表は客観的な事実のみを含むため、自分の意見を介入させる必要はありません。図表が何かを説明→詳細(例示)→データやグラフの傾向、といった流れでパラグラフを組むのがおすすめです。

タスク2は、自分の意見を述べる必要があります。序論→本体→結論、という英作文の厳格なルールに従い、論理的な文章を書くようにしましょう。

また、タスク1においても2においても、パラグラフライティングを徹底的に意識して、各段落で何を明示するかをはっきりさせましょう。

ライティング・パートの例題

Academic Writing Sample

Academic Writing Sample

こちらの問題を見てみましょう。

このグラフは、1992年10~12月の、イギリスでのラジオとテレビの視聴率の変化を示したグラフです。どの時間帯に視聴率が上がるのか、テレビとラジオの共通点や相違点は何かなど、言えそうなことは山ほどありそうですが、まずはそのグラフが何なのかを述べましょう。

The graph shows the changes of radio and television audiences throughout a day.

のように、一言でびしっと述べることが重要です。また、150ワード以内で書く必要があるので、冗長な表現を避けるなどの対策も必要です。

スピーキング・パート

IELTSスピーキングの一連の流れは英検のそれとかなり似ています。試験官と一対一になり、口頭でなされる質問に対して適宜答えていくスタイルです。「あなたの趣味は何ですか?」「休日には何をして過ごしていますか」など、基本的なことが聞かれます。

対問は3問あり、①日常に関する質疑応答をする問題、②トピックに関連したスピーチをする問題、③最後にそのスピーチの内容に関する質問に答える問題です。

スピーキング・パートの対策方法

まずはIELTSにおけるスピーキングテストの一連の流れを把握することがおすすめです。YouTubeには、7以上のスコア保持者のスピーキングテストの動画を視聴することができますので、対策にうってつけです。

もちろん、一言で返事をしてそれでおしまい、ではNGです。趣味は何かと聞かれたのであれば、その趣味が好きな理由、具体的には何をしているかなど、さまざまな方向に展開しましょう。

基本的には何を答えても正解です。ポイントは返答の内容ではなく、「以下に自然に答えられるか」が評価されます。ネイティブスピーカーのようなマシンガントークをする必要は全くないので、落ち着いて丁寧に答えましょう。

答え方の基本は重点先行主義です。冗長な表現を極力避け、シンプルかつ明快なやり取りを心がけましょう。詳しく説明しようとする場合でも、まずは最も重要なポイントから説明するようにしましょう。

スピーキング・パートの例題

スピーキング・パートでは以下のように質問されます。例を見てみましょう。

Q. Let’s talk about your home town or village. what kind of place is it?

A. It is a rural town, and you can reach there by only train from the center of Tokyo. And the population is quite small, because the people go outside for better life or jobs.

あなたの町、村について教えてください、という非常に簡単な質問です。かなり解答の仕方に幅がありますが、上のように答えればOKです。

途中でつっかえても、言い直しても大丈夫です。「Let’s see...(ええと...)」などのような、間をつなぐ系のフレーズを覚えておくと便利です。繰り返しになりますが、ポイントはいかに自然に答えられるかですので、細かいことを気にするよりも、相手に伝えようとすることを第一に考えましょう。

公式HPやYouTubeで利用可能なサンプルオーディオを聞いてみるとわかりますが、難解な語彙、難しい構文を駆使しなくても、7.0以上のスコアは取れます。とにかく情報を伝えることを第一に考え、対話をしましょう。

まとめ

IELTSは利用可能な情報が少なく、またかなりマイナーな試験であることから、試験対策はほかの語学試験と比較すれば難易度は高いです。

しかしながら、今回紹介した対策法などをうまく取り入れつつ計画的に勉強をすれば、スコアアップはかなり現実的なものとなります。ぜひ、目標スコアを達成できるよう、頑張ってみてください。

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