
TOEIC SWテストは、国際ビジネスコミニケーション協会(ETS)が企画運営する英語系資格試験です。以前までは比較的マイナーな試験でしたが、ここ最近になってその価値が見直され始め、このテストのスコアを利用する企業や学校も年々増加しています。
この記事では、これからTOEIC SWテストの受験を予定していて、勉強方法を模索している人向けに、SWテストのスピーキングセクションに特化した試験対策のノウハウをまとめました。ぜひ最後まで読んで、今後の試験対策に役立ててください。
Contents
アウトプット力をはかる「TOEIC SWテスト」の試験内容
TOEIC SWテストは、英語のアウトプットスキル(スピーキング力とライティング力)を測ることに特化した英語系資格試験です。TOEIC LRテストと対をなす試験であり、LRテストと同様に受験者は年々増加しています。
一般的にTOEIC(トイック)といえばLRテストのことを指すことが多いです。ですが、それは知名度と受験人口が高いからというだけの理由であって、「LRテストのほうがSWテストよりも良い」というわけでは決してありません。
そのため、TOEICの勉強に取り組む際には、LRテストとSWテスト両方でハイスコアを狙っていくのが王道であるといえます。LRテストばかり受けていて偏っているのであれば、ぜひSWテストにも挑戦してみましょう。2つのテスト両方を視野に入れて学習することで、4技能をバランスよく鍛えることができます。
現状、TOEICはSWテストよりもLRテストのほうが企業や学校に評価されていることは事実です。しかし、企業も大学も「使える英語」を重視する方向にシフトしており、それに応じてSWテストの重要性が認知され始めてきています。
TOEIC SWテストのスコアはスピーキングが200点、ライティングが200点の合計400点満点です。LRテストと同様に5点刻みでスコアが算出され、合格不合格などのすみ分けはありません。
受験料は、10,260円(税込)で、LRテストと比較すれば高めです。試験会場は全国の主要都市であり、会場は選べませんが、自宅近くの会場になることがほとんどです。
試験は高頻度で開催されており、ほぼ月に1回のペースです。また、午前と午後、1日に2回開催されるので、1年あたり24回程度の開催になります。申し込みは試験の1~2か月前に締め切られるので、早めの申し込みをしましょう。
スピーキングテストだけの受験もできる
TOEIC LRテストの場合、片方だけの受験ということはできませんが、SWテストの場合、スピーキングテストだけの受験も可能です。
このテストは厳密にいえばSWテストではなく、TOEIC Speaking Test(トイックスピーキングテスト)という名前のテストです。SWテストのスピーキングのテストモジュールがそのまま転用されていて、実質的にはSWテストのスピーキング部分だけを受ける、という形式になっています。
全く同じ試験内容なので、SWテストの対策をしていればこちらの対策にもなります。肩慣らし感覚でこちらのスピーキングテストを受けてみるのもおすすめです。
海外で英語を使った仕事をするなら150点前後をとりたい
SWテストのハイスコアの目安は各パートで「150点」です。海外で英語を使った仕事をするのであれば、このあたりのスコアを目標にしましょう。160点以上あれば、ビジネスで滞りなく英語を使えるレベルであるといえそうです。
TOEICスピーキングテスト対策を始める前にやっておくべきこと
このセクションでは、TOEIC SWテストのスピーキングセクション対策をする前に、ぜひ補強しておきたい基礎的な部分についてまとめています。
会話に支障のないレベルの語彙力をつける
TOEIC SWテストで求められる語彙力は非常に基礎的なものです。書店で売っている基礎的な単語帳で十分ですので、第一段階として語彙をマスターしておきましょう。
問題を正しく理解する、また、平易な語彙を使いこなして英語を作る、ということがスムーズにできる程度の語彙力が必要です。単語力が著しく低いと、言いたいことがまとまっているのに適切な単語が見つからず、スピーキングの際に言葉が止まってしまいます。
正しい発音を身に着ける
TOEIC SWテストを受験するのであれば、最低限の発音技術を身に着けておきましょう。多少の発音のずれは許容範囲ですが、極端に発音が母国語なまりだったりすると減点対象になります。
また、語彙を覚える際にもスペルとその和訳を覚えるだけでは不十分です。一発で聞き取れるように、そして口から正しい発音で発話できるように、発音記号やネイティブ音源などを利用して発音も一緒に覚えましょう。
英米の幼児が英語の正しい発音を習得する際に学ぶ英語のルール「フォニックス」を利用した学習がおすすめです。それ以外に、ネイティブのフィードバックが気軽に得られるオンライン英会話の利用もおすすめできます。レッスンをオンデマンドで受講することが可能であり、実際の試験対策にもなります。
本番のテスト実施形式を確認しておく
TOEIC SWテストの受験形式はかなり特殊です。ぶっつけ本番で取り組むと独特な問題形式を理解するのに相当苦戦することになります。LRテストと同様に、開催回によらず出題される問題の種類、形式、数などは変わらず、定番化されていますので、設問の形式などをしっかりと頭の中に入れてから、本番に臨みましょう。
スピーキングセクションの問題はすべてコンピューターベースで出題されます。LRテストのようにマークシート塗りつぶす形式ではなく、パソコン操作だけで試験が進みます。中身はかなり異なりますが、TOEFL iBTテストの形式とほぼ同じです。
回答は備え付けのヘッドセットで行います。問題文が読み上げられた後に、回答を考える時間と実際に回答する時間が与えられるので、定められた時間内にヘッドセットのマイクに向けて英語を話します。試験前にヘッドホンの音量チェックやマイクの動作テストなどもあるので、画面の指示に従って行いましょう。
最初は英文読み上げなどのかんたんな問題に始まり、後ろに行くほど難易度が上がっていくようになっています。
公式テキストを購入し解いてみる
TOEIC SWテストの対策の第一歩として、まずは公式テキストを手に入れて実際に解いてみることをおすすめします。詳細なスコアを出すことはできませんが、自身のレベルチェック、目標までのギャップの確認などができます。
TOEIC LRテストと同様に、TOEICの運営元であるETSが発行する公式の問題集「TOEIC Speaking & Writing 公式 テストの解説と練習問題」が利用できます。
この問題集は、本番と全く同じテスト作成者が作った模試であり、本番の練習をするにはもってこいです。独特の試験形式や流れを実際の問題を解きながら理解できます。本番の採点基準など、SWテストに関する情報が豊富に記載されているので、SWテストの受験者なら必携の1冊です。
この問題集が全く解けない場合、SWテストの受験レベルに達していない可能性があります。その場合は、もう一度しっかりとスピーキングなどを基礎から勉強するようにしましょう。
TOEICスピーキングテスト「音読問題」の対策
音読問題は、スクリーン上に表示された英文を読み上げるだけのシンプルな問題です。イントネーション、アクセント、発音、自然さなど、複数の観点が英語ネイティブのチェッカーに評価されます。問題数は2問、解答時間は各問45秒(準備時間45秒)です。
スピーキングの発音は「ネイティブレベルじゃないとダメ!」というわけでは全くありません。ゆっくり丁寧に、伝える気持ちをもって話せば十分なスコアが期待できます。具体的な音読問題の対策を解説します。
焦らず、無理のないペースで話す
流ちょうな英語=スピーディな英語、と勘違いをしている人が多いのですが、そんなことはありません。ゆっくり丁寧に話し、相手に伝える(伝えようとする)ことを第一として話しましょう。
解答時間に制限はありますが、ナチュラルスピードで話しても十分に間に合います。回答を開始する前に準備する間が与えられるので、その時間を利用して英文を読み、意味を理解しましょう。
文章の内容(中身)を理解できるに越したことはありませんが、最悪何が書いてあるのかわからなくても大丈夫です。字面だけをしっかりと読めば、得点できます。
発音・アクセント・イントネーションを意識した音読練習を
日本語にはない母音、子音、発音など、英語特有の発音はたくさんあり、特に、lとrの使い分けなどは最難関です。ぜひ音読によるトレーニングを積んで、マスターできるようにしましょう。
発音を間違えると、全く異なる意味になってしまう場合もあります。
右に曲がってください。
照明を消してください。
文章と、それをネイティブが読み上げた音源があればそれを利用しましょう。手本にならって、正しい音で英語の音読をするためのトレーニングができます。手本がないと我流の読み方が身についてしまい、後から矯正するのに苦労します。普段からテキストのCDなどを聞きこんで、正しい発音を確認するようにしましょう。
TOEICスピーキングテスト「写真描写問題」の対策
写真描写問題は、1枚の写真を見てその状況を口頭で説明する問題です。TOEIC LRテストのパート1のナレータのような作業を行います。問題数は1問、解答時間は各問45秒(準備時間45秒)です。写真描写問題の具体的な対策を解説します。
全体像をまず説明し、その後細かいところを述べる
その写真を一言でいうと何なのか、その写真から伝わる第一印象は何か、ということを最初に述べます。まず鳥の眼から始まり、だんだん虫の眼にシフトしていくイメージです。そしてそれについての自分の感想や意見などの主観も述べましょう。
また、情報過多になってもマイナスになることはありません。点数が最もとりやすい問題ですので、時間が許す限り、どんどん情報を加えていきましょう。
まずは1文で状況をざっくりと述べる練習を
上で説明した内容ともリンクしますが、まず1文でざっくりと外観を述べ、そこから派生させていくことが重要です。外観を述べる際に便利なフレーズを覚えて、スピーキングの練習をする必要があります。
3人の人がいます。1人目は…。2人目は…。
この写真は…を示しています。
TOEICスピーキングテスト「応答問題」の対策
スピーキングテストの応答問題は、英語での質問に対して回答をするシンプルな問題です。問題数は3問、解答時間は各問15秒または30秒です。準備時間はありません。質問がなされたら、即回答する必要があります。
内容を詰め込み過ぎず、聞かれた質問にしっかりと回答する
まずは最初の第一声で明確な答えを述べましょう。結論が後ろに来ることはあまり好まれません。また、冒頭で何も話さない空白時間を作ったり、ぼけた回答をしたりするとマイナスになります。
冠詞や3単現のsなど、小さなエラーは大幅な減点対象になりません。また、時間いっぱいにたくさん話さなくても得点ができる問題です。
ですが、あまりにも大きな文法的ミスは減点の対象になりますので、焦らず丁寧に、正しく発話することを心がけましょう。
瞬間的に端的な1文を話す練習を
英語は日本語とは異なり、後ろから情報を補強できる言語です。言いたいことが頭の中で固まっていなくても、「yes」や「no」など、1語で言いたいことを言い切ってから、そのあとに情報を補強するのも1つの手です。
後から情報を追加する場合には、前置詞や関係代名詞などをうまく駆使して、文法的な誤りがないように話しましょう。
TOEICスピーキングテスト「提示された情報に基づく応答問題」の対策
提示された情報に基づくスピーキングの応答問題は、イベントの開催アナウンスなど、日常でよく目にする英文を読み、その情報に関連した質問に対して回答する問題です。問題数は3問、解答時間は各問15秒または30秒(準備時間45秒)です。
短時間で内容を読み取る速読力が重要
情報を読み取る時間が45秒しかないので、端から端までまじめに読んでいたら時間切れになってしまいます。フォトリーディングなどの速読テクニックを駆使して、素早く情報を読み取るスキルを身につけましょう。問題が読まれた後に情報を再確認することもできるので、準備時間で細かい数字や情報を暗記する必要などはありません。
また、この素早く情報を読み取るスキルは、TOEIC LRテストのPart 7のシングルパッセージ問題などで役に立ちます。ぜひ、身に着けておきましょう。
時間稼ぎフレーズも覚えておく
フィラー(filler)とよばれる、間をつなぐフレーズを多用するのも手です。フィラーには「Let me see…」や、「Hmm…」などがあります。無言で空白を作るよりもベターになりますので、困ったら使ってみましょう。
TOEICスピーキングテスト「解決策を提案する問題」の対策
解決策を提案する問題では、コールセンターで働く人のような立ち位置でお客様対応のロールプレイを行います。問題は1問、準備時間45秒、解答時間60秒です。
テンプレートをもっておくと解きやすくなる
汎用性の高い英語表現のテンプレートはぜひ暗記して、いつでも使える状態にしておきましょう。こんなトラブルのときにはこんなテンプレートで対応しようといったように、対応のパターンをいくつか控えておくのがおすすめです。
以下のようなテンプレートを覚えておくと、いざというときに役立ちます。
つまり、問題は…ですね?
…をしたいのであれば、
長文のリスニング力を向上させよう
現実とは違いコンピューターから発せられる音声なので聞き返すことはできません。平易な英語を一発で聞き取れるくらいの最低限のリスニングスキルは身に着けておきましょう。
解決策を提案する問題で流れる英語は比較的長く、情報量も多いです。それなりのリスニングスキルがないと問題文を聞く時点で理解ができず、話者が何について困っているのかを把握できません。
また、話者が最も言いたいことは何なのか、結局何が言いたいのかを抽出するスキルも重要です。メモを取ることはできないので、要点だけを把握できるようにトレーニングしましょう。
TOEICスピーキングテスト「意見を述べる問題」の対策
意見を述べる問題は、与えられた論点に対して賛成か反対かを、根拠とともに答える問題です。これまでの問題同様英会話の基礎的なスキルが問われることはもちろん、それに加えて、論理的に話が組まれているか、といった要素も評価されます。問題数は1問、準備時間30秒、解答時間は60秒です。
結論先行の論理的な構成で話す
SWテストに限った話ではありませんが、論理的に筋道を立てて説明するスキルはとても重要です。意見を述べる問題でも、英語のロジカルセンテンスのルールにのっとり話しましょう。
序論→本体→結論、の流れが唯一の王道です。まずはこの流れで話の流れを作り、そのあとに時間内に収めるように頭の中で英作文をしましょう。このスキルは英検1級、準1級の2次試験(面接)でも役に立ちます。
まずは序文で自分のスタンスを明確にします、論点に対して、賛成(for)か反対(against)かを第一声で明示します。
わたしはその提案には反対/ 賛成です。
上の例文をベースに、文末を少し工夫することで、よりスマートな表現にすることも可能です。
以下の理由で、わたしはその提案には反対/ 賛成です。
スタンスを明確にしたら、本体に移ります。作り話でもいいので、根拠をこしらえて例示したりしましょう。著名人の意見などを引用するのも手です。例示する話の数やボリュームは、制限時間にうまくフィットするように調整します。
理由は2つあります、1つめは…。
ポイントは3つあります。1つ目は…、2つ目は…。
最後に、もう一度スタンスを述べて自分の意見を再度述べます。序文で使ったフレーズを再利用してもOKなのですが、文頭に「that is why(そのため)」や「therefore(なので)」をつけるとスマートになります。
なので、わたしはその提案には反対/ 賛成です。
まずは英作文で文章構成力を鍛えよう
いきなり英会話のトレーニングをするのは少しハードルが高い、と感じる人は、まず英作文のトレーニングをすることがおすすめです。
英作文のトレーニングをしても英会話のトレーニングにならないのではと思う人もいるかもしれませんが、それは違います。英会話は瞬間英作文ですので、英作文のスキルを鍛えて、その英作文のスピードを限りなく上げていけばそれが英会話になります。
ノートに手書きで英作文をしたりするのがおっくうであれば、SNSなどをうまく利用して英作文のトレーニングをしましょう。英語でスピーディに英作文して投稿をしたり、だれかの投稿に英語で返信をしたりするのがおすすめです。英語ネイティブの友人がいるのであれば、その人とメッセンジャーアプリでやり取りをするのも効果的です。
意見を述べる問題は、他の分野に比べ、できるようになるまでは、長い時間と集中した勉強が必要になります。根気強く練習を続けましょう。
TOEIC SWスピーキングテストまとめ
TOEIC SWテストのスピーキングの問題形式は独特であり、専用の対策は必須です。人によってはかなり難しいと感じるかもしれません。しかし、正しい方法でトレーニングをすれば確実にスコアアップを望めます。総合的な英語力の向上を目指している人であればSWテストの受験は避けては通れない道ですので、ぜひ頑張ってください。